【公認会計士が解説】売上債権回転率とは?意味、計算式、目安、売上債権回転期間との関係も解説~効率性分析~

効率性分析
ヘタレモンスター

ねーねー、売上債権回転率っていう漢字だらけの単語見たんだけど、何か知ってる?

まおすけ

あのな。オレ一応、公認会計士で会計のプロやぞ💢

ちょっと腹立ったし、お前の脳ミソに入り切らんくらいに、パンパンに情報詰め込んだるわ。

ヘタレモンスター

ひえっ。

お手柔らかにお願いします。

財務分析をしていると、「売上債権回転率」という単語が出てきますが、あなたはちゃんと背景も含めて意味を理解していますか?

この記事では、売上債権回転率の計算式だけでなく、意味も深堀りして解説していきます。

業種ごとの目安、改善方法売上債権回転率との関係も解説していますので、ぜひ最後まで確認してください。

【この記事のメリット】
  • 「売上債権回転率」の意味がわかる
  • 「売上債権回転率」の計算式がわかる
  • 「売上債権回転率」の改善方法がわかる
  • 「売上債権回転率」と「売上債権回転期間」の関係がわかる
  • 「売上債権回転率」の目安がわかる
【こんな人におすすめ】
  • 財務分析に強くなりたい人
  • 株式投資をやりたい人、やっている人
  • 簿記を勉強していて、知識を深めたい人
まおすけ

公認会計士歴10年以上、日商簿記1級ホルダーのワタシ、まおすけがわかりやすく解説します。

(念の為、合格証書も載せておきますね)

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売上債権回転率の概要

最初に概要を載せておきます。

この情報だけでOK!という人は、この先を見る必要はありません。

指標分類効率性(お金がきれいに流れているか)
意味効率よくお金を回収できているか
計算式 売上高 ÷ 売上債権
(売上債権は「売掛金」と「受取手形」を足したものです)
見方数値が多いほど、効率よくお金を回収できている
算出に必要な決算書と項目貸借対照表(B/S):売上債権(=売掛金+受取手形)
損益計算書(P/L):売上高
英名Trade Receivable Turnover Period
まおすけ

もうちょい知りたいな!という人は続きをどうぞ。

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売上債権回転率の計算式と意味

売上債権回転率の計算式

まず、詳しい意味の説明の前に、計算式を載せておきます。

売上債権回転率の計算式

計算式で使われている単語の意味も説明しておきますね。

売上高」は、文字通りその会社の売上です。
損益計算書の一番上に書いてある数字です。

売上債権」は、売上げたお金を後からもらえる権利です。
貸借対照表(B/S)に、「売掛金」や「受取手形」として出てきます。

図で表すとここです↓

【売上債権とは】
簡単に言うと、後からお金を貰える権利のことです。

実は、通常の会社間の取引では、売上は現金でもらいません。1ヶ月分とかをまとめて、後で払ってもらうことが多いんです。

この後からお金をもらえる権利をまとめて「売上債権」と言います。

一般的には「売掛金」と「受取手形」の2つを指します。

貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)がわからない人は、先にこちらの記事をどうぞ。

まおすけ

次は、売上債権回転率の意味を説明します。

売上債権回転率の意味

売上債権回転率の意味は、

売上債権回転率の意味
  • 売上と売上債権の比率、ひいては
  • 売上債権の回収がどれくらい効率的に行われているか

です。

売上や売上債権の金額は、会社の規模によって全く違います。

それを比率にして、一律で比較できるようにした指標が売上債権回転率なんです。

この数値が高いほど、売上債権が効率的に回収されている、ということを意味します。

ヘタレモンスター

この売上債権回転率が高いと、なんで良いの?

まおすけ

よし、しっかりと理解するために説明したろ。

売上債権回転率が高いほど良い理由

売上債権は、後からお金を貰える権利です。

でも実は売上債権って、踏み倒されることもあります☠(専門用語で「貸倒れ」と言います)。

企業の最終的な目標は、ぶっちゃけた話「💴お金」です。
売上債権がどれだけ増えようが、「💴お金」が増えないと意味ありません。

だから企業としては、売上債権を早く回収したいと思っています。
つまり、売上債権は小さいほど良いんです。

ここで、もう一度売上債権回転率の式を見てください。分母に売上債権がありますよね

なので、

売上債権は小さいほどよい

売上債権回転率の分母が小さいほどよい

売上債権回転率が大きいほどよい

という流れになります。

ヘタレモンスター

言葉だけじゃ意味わかんない!
何か計算例とか出してもうちょっと説明してよ!

まおすけ

わかったわかった、もうちょい説明したろ。

売上債権回転率の計算例と深めの解説

例えば、以下の2つの会社の売上債権回転率を計算して比較してみましょう。

【A社】

  • 売上高:3,000円
  • 売上債権:300円

【B社】

  • 売上高:1,000円
  • 売上債権:200円

すると、売上債権回転率の計算は、

  • A社:3,000円÷300円=10回
  • B社:1,000円÷200円=5回

となります。

この2つの会社であれば、A社の方が数字が大きいので資金を効率的に回収できている、ということです。

もう少し、どういうことか深く考えてみましょう。

まず、売上を見てください。

  • A社は3,000円
  • B社は1,000円

です。

次に、売上債権を見てください。

  • A社は200円
  • B社は100円

です。

売上債権は小さいほど良いので、一見Bの方がしっかり資金を回収しているように見えます。

ですが、売上と併せてよく考えてください。

  • Aは売上が3,000もあるのに、売上債権が200しか残っていない
  • Bは売上が1,000しかないのに、売上債権が100も残っている

という見方ができるんです。

要は、売上の規模に比べて売上債権がどれだけ残っているかが重要です。

なのでそれを一律に比較できるように、比率にして表したのが売上債権回転率です。

売上債権回転率を使うと、規模が違う会社でも比較をすることができるようになります。

ヘタレモンスター

なるほど、売上債権回転率が大きいほうが良いことはわかったよ。

でも、売上債権回転率が低いと何か悪いことあるの?

まおすけ

うん、デメリットいっぱいや。解説したろ。

売上債権回転率が低い場合のデメリット4つ

売上債権回転率が低い場合のデメリットは、以下の4つです。

売上債権回転率が低い場合のデメリット
  • 資金が枯渇して、最悪の場合倒産するリスクがある
  • 借入金が増えて利息負担も増える
  • 売上債権を踏み倒されリスクが高くなる
  • 不良債権を抱えている可能性がある

順に説明します。

資金が枯渇して、最悪の場合倒産するリスクがある

売上債権回転率が低いと、資金、つまりお金を効率的に回収できていないということです。

要は、売上げはあるけどそれが売上債権で止まって回収できていない、ということ。

するとどうなるか。

単純な話、手元のお金がなくなります

企業が倒産する時は、お金がなくなったときです。

売上債権回転率が低いと、最悪の場合、資金が枯渇して倒産する場合もあります。

詳細は以下の記事も見てください。

【簿記の初心者向け】キャッシュフロー計算書とは?見方のポイントを解説~財務分析の基礎~

借入金が増えて利息負担も増える

売上債権回転率が低いと、お金を効率的に回収できず、手元に資金が残りません。

なので、どうしても支払いにお金が必要になった場合、どこかから借りてこないといけません

代表例は銀行からの借入ですが、もちろん利息がかかります

つまり、売上債権回転率が低いと、利息の負担も増えることになります。

流れをまとめると以下のとおりです。

売上債権回転率が低い

手元に資金がなくなる

どこかから借りてこないとダメになる

金利負担が増える

売上債権の踏み倒されリスクが高くなる

売上債権とは、後からお金を貰える権利のことです。

ただ、ガチガチに拘束された権利ではなく、相手がその気になれば踏み倒すこともできます。(専門用語で「貸倒れ」と言います)

一方、売上債権回転率が高いということは、売上規模に比べて売上債権を多く抱えていることを意味します。

売上債権を多く抱えるデメリットは以下のとおりです。

【売上債権を多く抱えるデメリット】
  • 踏み倒される確率が上がる
  • 踏み倒されたときのダメージが大きくなる

つまり、売上債権回転率が低いと、踏み倒しに関するリスクが上がります

不良債権を抱えている可能性がある

(このデメリットは、株式投資をする人の視点です。)

売上債権回転率が低いと、売上債権を多く抱えていることを意味します。

その売上債権がちゃんと回収できるならいいんですが、踏み倒される寸前の売上債権も含まれているかもしれません。

踏み倒されそうかどうかは外部からはわからないんですが、売上債権回転率が高いということは、踏み倒されそうな債権が含まれているリスクが高いということです。

まとめると以下のとおりです。

売上債権回転率が低い

売上債権を多く抱えている

踏み倒されそうな債権が含まれているリスクが上がる

ヘタレモンスター

売上債権回転率が悪いとデメリットいっぱいなのもわかったよ。

でも、これって良くする方法はないの?

まおすけ

もちろんあるで!代表的な方法を教えたろ。

売上債権回転率の改善方法

売上債権回転率を改善する方法は、主な方法は以下の4つです。

売上債権回転率の改善方法
  • ファクタリングや手形割引を活用する
  • 支払期日の短い決済手段に変える
  • 請求書の支払い期日を短くする
  • 分割して請求する

順に解説します。

ファクタリングや手形割引を活用する

ファクタリングや手形割引とは簡単に言うと、まだ期日が来ていない売掛金や受取手形を誰かに売却して早期に現金化する方法です。

売掛金や受取手形をさっさと現金化すれば、売上債権が減って売上債権回転率が良くなります。

ただし、ファクタリングや手形割引を使うと、手数料が取られます。

期日まで待てば1,000円入ってくるものを早めに売って入金してもらうので、例えば20円分を手数料として取られて、実際は980円しか入ってこなくなります。

売上債権回転率を良くするためだけにこの方法を使いまくると、本来入ってくるはずの金額より少なくなってしまい、本末転倒になりかねないので注意が必要です。

ファクタリングや手形割引は単純な売却とは違い、遡及義務とかややこしい話が付いてきますが、ここでの説明はめんどくさいので割愛します。

支払期日の短い決済手段に変える

企業の決済手段には色んな方法があります。例えば以下のような方法です。

【企業の決済手段の代表例】
  • 現金
  • クレジットカード
  • 電子マネー
  • 売掛金(振り込み)
  • 受取手形

現金や振り込み以外の決済方法は、中間に業者が入るので、なかなかお金が入ってきません。

すると、売上債権の金額が大きくなって、売上債権回転率が悪くなります。

この決済手段を、できるだけ早くお金をもらえるような決済手段に変えれば、売上債権の金額が減って、売上債権回転率が良くなります。

ぶっちゃけた話、全ての決済をニコニコ現金払いにすれば、売上債権はゼロになって売上債権回転率は「無限大∞」になります。

ただ、電子マネーやインターネット全盛のこの時代に、「現金のみ」というのは時代に合いません。支払う側からしたら、全部現金払いなんて、めんどくさくてしょうがないからです。

近年ではクレジットカードや電子マネーでも、「翌日入金」や「翌々日入金」のような業者も増えてきてます。

そのような業者を活用すると売り手、買い手の双方にとってメリットがあります。

請求書の支払い期日を短くする

この方法は、例えば今まで2ヶ月後に入金してもらっていたものを、1ヶ月後に入金してもらうように変更する方法です。

早め、早めに入金してもらえれば、売上債権の金額が小さくなって、売上債権回転率の数値は良くなります。

ただ、この方法はぶっちゃけ難しいです。

お金を支払う側にしたら、今まで2ヶ月分の現金を手元に置いておけたのに、いきなり「1ヶ月後にお金振り込むようにしてくれ。」って言われたら、

お金を支払う社長

ちょっと待て。

なぜいきなり早く振り込まないとダメなのだ。

ってなります。

もしこの方法を取るのであれば、例えば、

  • 自社以外にその商品が買えない状況にする
  • 早く入金してもらう代わりに少しだけ安くする(「売上割引」と言います)

など、何か理由を付けてから相手と交渉する必要があります。

分割して請求する

これは、例えば今まで1ヶ月に1回請求していたのを、1ヶ月に2回請求するようにする、という方法です。

コツコツ入金してもらえれば売上債権の金額は大きくならず、売上債権回転率は良くなります

ただ、ぶっちゃけ難しい方法です。

こちらにとっても相手にとっても、今まで1ヶ月に1回だけ請求、支払いすればよかったものが2回になれば、単純に2倍手間がかかります。

もしこの方法を取るのであれば、例えば一部の長期のプロジェクトのスタート時点でコツコツ入金してもらうよう取り決めをするなど、工夫をしなければお互いにとってデメリットになりかねません。

ヘタレモンスター

そういえば話が飛ぶんだけど、「売上債権回転期間」って言葉もあるんだけど、これってなんなの?

売上債権回転率と何か関係あるの?

まおすけ

バリバリの関係しかないな。

簡単やし、ついでに軽く解説したろ。

売上債権回転期間との関係

売上債権回転率に似た指標で、「売上債権回転期間」という指標があります。

売上債権回転期間の計算式は、以下のとおり。

売上債権回転期間の計算式

【単位について】
分母の売上高の数字を何にするかで、以下のように変わります。
・1年の売上で計算▶「年」
・1ヶ月平均の売上で計算▶「ヶ月」
・1日平均の売上で計算▶「日」

数式をよく見てもらえるとわかりますが、売上債権回転率の分子と分母をひっくり返しただけです。

売上債権回転期間は、売上債権が回収される平均の期間を意味します。

売上債権回転率は高いほど良いですが、逆に売上債権回転期間は低いほど良いです。低いほど売上債権が早く回収される、ということを意味するからです。

売上債権回転期間のポイントをまとめておくと、以下のとおりです。

売上債権回転期間のポイント
  • 計算式は、売上債権回転率の分子と分母を反対にしただけ
  • 単位は、売上高の数字に何を使うかで変わる
  • 売上債権が回収される平均の期間を意味する
  • 低いほどよい(売上債権が早く回収されるから)
ヘタレモンスター

売上債権回転率に関する内容は大体わかったよ。

でも、これってどれくらいの数字になればいいの?

まおすけ

業界によって全然違うねん。

オレが政府の資料から計算したから、目安を見せたろ。

売上債権回転率と回転期間の目安

中小企業庁が出している「中小企業実態基本調査」の数値で、筆者が独自に計算した、産業別の売上債権回転率と売上債権回転期間の平均値は、以下の通りです。

産業売上債権回転率売上債権回転期間
(ヶ月)
建設業9.21.3
製造業 5.72.1
情報通信業6.81.8
運輸業,郵便業8.61.4
卸売業6.41.9
小売業12.01.0
不動産業,物品賃貸業17.40.7
学術研究,専門・技術サービス業 7.11.7
宿泊業,飲食サービス業30.50.4
生活関連サービス業,娯楽業49.60.2
その他サービス業8.61.4
全産業平均7.81.5

(出典:中小企業庁 中小企業実態基本調査

通常、売上債権は期中平均を使うことが多いですが、今回は「期末の売掛金+受取手形」で計算をしています。

ヘタレモンスター

本当に産業によってバラバラだね。

まおすけ

大体の方向性として、普通の一般客を相手にするような小売業、宿泊業、サービス業は売上債権回転率が高めや。
逆に、会社を相手にする製造業とかは売上債権回転率が低めやな。

このイメージをもって分析してみるとええで。

売上債権回転率のまとめ

ヘタレモンスター

うう、、、頭がパンパン・・・。

まおすけ

思い知ったか。

とはいえ、企業の資金効率を見る重要指標やから、しっかり理解しとくとええで。

ヘタレモンスター

あ、、、、ありがとう。

もう一度復習しておくよ。。。

売上債権回転率のまとめ
  • 「売上高÷売上債権」で計算される
  • 高いほど資金が効率的に回収できていることを意味する
  • 売上債権回転の分子と分母をひっくり返すと売上債権回転期間になる
  • 売上債権回転率は業種によって、目安が全然違う

今回は、売上債権回転率の説明をしました。

財務分析をする際に非常によく出てくる重要指標ですので、この記事で概要をしっかり把握しておいてください。

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財務分析のためのおすすめ書籍

まおすけ

最後に、公認会計士である私まおすけが、財務分析関連の書籍を色々と読み漁って「これは良い!」と思った書籍を5冊厳選して紹介します。

読むと、財務分析がより楽しくなります。

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