ねーねー、こないだB/Sについて教えてもらったけど、もうちょい見方を教えてくれない?
よし、じゃあ今日は固定比率と固定長期適合率について教えたろ。
会社の長期の安全性を見る指標やで。
公認会計士歴10年以上、日商簿記1級ホルダーのワタシ、まおすけがわかりやすく解説します。
(念の為、合格証書も載せておきますね)
今回は財務分析の中の安全性分析の基礎として、固定比率と固定長期適合率の解説です。
その他の安全性指標について知りたい人は、こちらの記事をどうぞ。
▶【会計士が解説】安全性分析とは?重要な5つの指標を解説~財務分析の基礎~
固定比率と固定長期適合率の概要
最初に固定比率と固定長期適合率の概要を載せておきます。
【固定比率】
指標分類 | 安全性(いかに会社がつぶれにくいか) |
---|---|
意味 | 固定資産を、純資産でどれくらい賄っているか |
計算式 | (固定資産 ÷ 純資産)×100 (%) |
見方 | 数値が低いほど、安全性が高い |
目安 | 安全水準:50%以下 危険水準:150%超 |
算出に必要な決算書と項目 | 貸借対照表(B/S):固定資産、純資産 |
【固定長期適合率】
指標分類 | 安全性(いかに会社がつぶれにくいか) |
---|---|
意味 | 固定資産を、固定負債と純資産とでどれくらい賄っているか |
計算式 | (固定資産 ÷ (固定負債+純資産))×100 (%) |
見方 | 数値が低いほど、安全性が高い |
目安 | 安全水準:80%以下 危険水準:100%超 |
算出に必要な決算書と項目 | 貸借対照表(B/S):固定資産、固定負債、純資産 |
もしこれで、わかった!という人は、この先を読む必要はありません。
これ見て「???」な人は続きをどうぞ。
固定比率とは
まず、固定比率を説明するで!
固定比率とは、
を表した比率です。
この比率が低いほど、固定資産を純資産で賄っており、長期の安全性が高いことを意味します。
うん、全然イメージわかない。
もうちょっと解説して。
まあ、具体例とか見なわからんわな。説明したろ。
固定比率について
固定比率の計算式
固定比率は、貸借対照表から計算できます。
計算式は
です。
固定資産、純資産とは、
- 固定資産→1年を超えてお金を回収する予定の資産
- 純資産→資金調達額のうち、返さなくてよいお金
という意味です。
(詳細はこちらの記事をどうぞ)
固定比率の計算で使う部分をBSで見ると、下記の部分です。
固定資産は1年を超えてお金を回収する、つまりすぐにはお金にならない資産です。
(代表例は、土地や建物、機械装置などです)
なので、固定資産はできるだけ返さなくて良いお金(純資産)で買うことが望ましいです。
それを比率で計算したものが「固定比率」です。
固定比率が低いほど、返さなくて良いお金(純資産)で固定資産を買っているので、長期的(1年を超えて)に資金が安定しているということを意味します。
数字がないとわかりにくい!計算例も出して!
わかったわかった。説明したろ。
固定比率の計算例
計算例1
固定資産800、純資産1,000の会社があったとします。
この会社の固定比率の計算は、
となります。
つまり、純資産1,000のうち、80%を固定資産の購入に当てている、という意味です。
逆に言うと、まだ残り20%の純資産が余っており、長期的に資金が安定しているという意味でもあります。
計算例2
固定資産1,500、純資産1,000の会社があったとします。
この会社の固定比率の計算は、
となります。
つまり、純資産1,000の150%、つまり1.5倍の金額の固定資産を購入している、という意味です。
じゃあ、はみ出た分の0.5倍はどこで賄っているのかというと、負債です。
負債は返さないといけないお金なので、この会社は長期的な資金繰りが安定していない、という意味になります。
え、じゃあ固定資産を買う時は、全部純資産で賄ったほうがいいの?
お、ええとこ気付いたな。実は固定比率は弱点があるねん。
説明したろ。
固定比率の弱点
現実の固定資産を買う時に、全て純資産、つまり自己資金で賄うことは少ないです。
通常は、負債つまり借金をして固定資産を購入することが多いです。
しかし、固定比率では、この負債を全く考慮しません。
もちろん、純資産で賄ったほうがよいのですが、そうもいかないことが多いのです。
そこで出てきたのが「固定長期適合率」です。
ということで、ここからは固定長期適合率を解説するで!
固定長期適合率とは
固定長期適合率とは、
を表した指標です。
この比率が低いほど、固定資産を「固定負債と純資産」で賄っており、長期の安全性が高いことを意味します。
はい、やっぱり全然イメージわかない。
解説ぷりーず。
はいはい、じゃあ計算してみよか。
固定長期適合率について
固定長期適合率の計算式
固定長期適合率も、貸借対照表から計算できます。
計算式は
です。
固定負債とは、
- 固定負債→1年を超えて返さないといけないお金
です。
(詳細はこちらの記事をどうぞ)
計算に「固定負債」を考慮しているところが違います。
「固定負債」は1年を超えて返すお金なので、純資産のように返さなくてよいわけではないのですが、固定資産のように長期で回収する資産を購入するには相性が良いのです。
固定長期適合率の計算で使う部分をBSで見ると、下記の部分です。
固定資産は1年を超えて回収する資産なので、できるだけ長期で返済するお金(固定負債)と返さなくて良いお金(純資産)で買うことが望ましいです。
それを比率で計算したものが「固定長期適合率」です。
固定長期適合率が低いほど、返済期限が長いお金(固定負債)と返さなくて良いお金(純資産)で固定資産を買っているので、長期的(1年を超えて)に資金が安定しているということを意味します。
固定長期適合率の計算例
計算例1
固定資産800、固定負債600、純資産1,000の会社があったとします。
この会社の固定長期適合率の計算は、
となります。
つまり、固定負債600+純資産1,000=1,600のうち、50%を固定資産の購入に当てている、という意味です。
逆に言うと、まだ残り50%が余っており、長期的に資金が安定しているという意味でもあります。
計算例2
固定資産1,500、固定負債200、純資産1,000の会社があったとします。
この会社の固定長期適合率の計算は、
となります。
つまり、固定負債200+純資産1,000=1200の125%、つまり1.25倍の金額の固定資産を購入している、という意味です。
じゃあ、はみ出た分の0.25倍はどこで賄っているのかというと、「”流動”負債」です。
流動負債は1年内に返さないといけないお金です。
よって、この会社は長期的な資金繰りが安定していない、という意味になります。
計算はわかったよ。
で、固定比率と固定長期適合率はどれくらいの数字になればいいの?
一応の目安はあるし、解説しとくわ。
固定比率、固定長期適合率の目安
固定比率、固定長期適合率の目安は一般的に
【固定比率】
- 安全水準:50%以下
- 危険水準:150%以上
【固定長期適合率】
- 安全水準:80%以下
- 危険水準:100%以上
と言われています。
ただし、下記表のように固定比率、固定長期適合率は業種によってかなりばらつきがあるため、
自分の分析しようとしている会社の業種が、どこに属しているかも重要です。
業種 | 固定比率 | 固定長期適合率 |
---|---|---|
建設業 | 77% | 52% |
製造業 | 97% | 62% |
情報通信業 | 64% | 47% |
運輸業 | 156% | 77% |
卸売業 | 87% | 58% |
不動産業 | 184% | 83% |
専門・技術サービス業 | 92% | 72% |
宿泊業,飲食業 | 347% | 98% |
娯楽業 | 187% | 87% |
その他サービス業 | 88% | 52% |
(中小企業実態基本調査 平成30年確報 より)
計算式の覚え方
財務分析の計算をする際、9割以上の人が計算式を忘れます。
特に、どっちが分子でどっちが分母だっけ?的な悩みは尽きません。
(筆者のまおすけの受験時代もそうでした)
よい覚え方があります。
B/Sの資産と負債で分析をする場合は、
と覚えてください。
固定比率、固定長期適合率でいえば、左にある数値は固定資産、右にある数値は固定負債、純資産なので、
固定長期適合率:固定資産 ÷ (固定負債+純資産)
です。
「ひだり わる みぎ!」
で頭に叩き込んでおいてください。
固定比率、固定長期適合率のまとめ
ここまで説明した固定比率の項目をまとめます。
【固定比率】
指標分類 | 安全性(いかに会社がつぶれにくいか) |
---|---|
意味 | 固定資産を、純資産でどれくらい賄っているか |
計算式 | (固定資産 ÷ 純資産)×100 (%) |
見方 | 数値が低いほど、安全性が高い |
目安 | 安全水準:50%以下 危険水準:150%超 |
算出に必要な決算書と項目 | 貸借対照表(B/S):固定資産、純資産 |
【固定長期適合率】
指標分類 | 安全性(いかに会社がつぶれにくいか) |
---|---|
意味 | 固定資産を、固定負債と純資産とでどれくらい賄っているか |
計算式 | (固定資産 ÷ (固定負債+純資産))×100 (%) |
見方 | 数値が低いほど、安全性が高い |
目安 | 安全水準:80%以下 危険水準:100%超 |
算出に必要な決算書と項目 | 貸借対照表(B/S):固定資産、固定負債、純資産 |
計算結果が低いほどよいっていうのがわかりにくいねー。
まあ、そこだけ気をつければわかりやすい指標やけどな。BSだけ見たらわかる指標やし。
安全性分析の時に、よく使われる指標やからBSを見たらとりあえず計算してみるとええで。
はーい。
今回は、
- 固定比率、固定長期適合率の意味
- 固定比率、固定長期適合率の計算方法
- 固定比率の弱点と固定長期適合率の関係
- 固定比率、固定長期適合率の目安
を解説しました!
BSを見れば、すぐに計算ができる超ポピュラーな指標なので、是非覚えておいてください!
この記事があなたのスキルアップのお役に立てると嬉しいです。
その他の安全性指標について知りたい人は、こちらの記事をどうぞ。
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